講師:藤村龍至(東洋大学専任講師/藤村龍至建築設計事務所代表)
□Why 藤村龍至 ?
アーキフォーラム第7回では、講師に藤村龍至氏をお迎えいたします。すでに超有名の域に達していらっしゃる方なので細かい紹介は不要かもしれません。実際のところ、藤村氏の肩書きは「東洋大学講師/藤村龍至建築設計事務所代表」なのですが、大学講師としては着任されてまだ半年程度ですし、一方で、建築家としての実作もまだ数えるほどしかありません。つまり、大学講師としても建築家としても、特別に大きな実績をお持ちではありません。しかしながらその活躍の幅や知名度は抜群すぎるほどで、今回のアーキフォーラムも大盛況となるであろうことは容易に想像できます。さて、この有名な「建築家」の藤村氏について、この場で敢えて肩書きの話を持ち出したのは、藤村氏のこれまでの活動内容がいわゆる巷の「建築家」のそれとはあまりに違いすぎるからに他なりません。このことは時に藤村氏への逆風となりアンチを生む構造にすらなっているわけですが、逆の見方をすれば藤村氏がこれまでに行ってきた活動を振り返ることで改めて「建築家」という職能について考え直すことができるのではないかという期待もできるのです。事実、藤村氏の言説の中には「Google的建築家像」という言葉も登場し、これからの時代に相応しい建築家像を提示しようとしているのは明らかで、それは従来のアトリエ的建築家像とは異なります。それが今回藤村氏をアーキフォーラムの講師として御呼びすることにした大きな理由の一つにもなっています。つまり、特殊解としての藤村龍至を通して「建築家とは何か」という問いに対する普遍解を探ろうという試みです。
そしてもう一つの理由は藤村龍至人気という現象に対する興味。一般に、何らかの新しい言説が提示されたとき、まずはその内容を理解しようとするのものです。そしてその次のステップとして、その言説に対し自分は賛同できるのかそうでないのかの判断を行うのがいわゆる良識的な思考判断手順です。もちろん、登場する言葉や論の背景・歴史に対する知識が不足すると内容は十分に理解することはできず、判断については留保せざるをえないグレーゾーンが残ることもあります。東浩紀氏らをはじめとする時代の先端を走る批評家や社会学者らとの共著をお持ちであるなど、その先端性・新奇性(新しすぎて賛同できるか否か判断保留とせざるを得ないことが含まれるという意味)も含め、私の中にはまだ藤村氏に対するグレーゾーンが残っています。が、藤村氏には、特に時代に敏感な学生からの圧倒的な人気があります。その源は何なのか?私の中にあるグレーな部分が何故グレーであるのかという問題意識から、様々な疑問点を藤村氏にぶつけてみることで、結果的に現在の藤村龍至人気の背景を浮かび上がらせることができるのではないかと考えています。(満田衛資)
□第7回講演:
批判的工学主義から CITY2.0 まで/藤村龍至
□日時:2010年10月30日(土)
●講師プロフィール
・1976年 東京都生まれ
・2000年 東京工業大学工学部社会工学科卒業
・2002年 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了
・2002〜03年 ベルラーヘ・インスティテュート(オランダ)
・2003〜08年 東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻博士課程
・2005年 藤村龍至建築設計事務所設立
・2008年〜 東京理科大学、首都大学東京、日本女子大学などで非常勤講師
・2010年 東洋大学専任講師
●メディア関連
・2002年〜 ウェブサイト「roundabout journal」
・2007年〜 フリーペーパー「ROUNDABOUT JOURNAL」
・2008年〜 イベント「LIVE ROUNDABOUT JOURNAL」
・2010年〜 ウェブマガジン「ART and ARCHITECTURE REVIEW」
●主な著書
・2009年 『1995年以後』(編著・エクスナレッジ)
・2010年 『地域社会圏モデル』(共著・INAX 出版)
●主な展覧会キュレーション
・2009年 「生成の世代」「ARCHITECT 2.0」「ARCHITECTURE AFTER 1995」
・2010年 「超都市からの建築家たち」「CITY 2.0」
●主な受賞
・2008年 第29回INAXデザインコンテスト審査委員特別賞(BUILDING K)
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