講師:三分一博志(建築家)
□Why 三分一博志 ?
いわゆる著名な建築家は、その作家性を示すキーワードであったり形態であったり何らかの固有のイメージを我々に抱かせてくれます。今回の講師である三分一博志さんについて言えば「環境」というキーワードをイメージする方が多いのではないでしょうか。今回の講演に際しては、『地球のディテール/六甲』という演題を設定していただきました。
さて、環境という言葉を聞いて皆さんはどんなことを連想するでしょうか?今や「環境のためによいことをしましょう」という言葉はとても幅広く、そして金科玉条のごとく使われています。環境ビジネスという言葉が登場し、エコカー減税やエコポイントといった政策までもが実施されています。しかしそこで言う環境問題とは、いつのまにか“地球温暖化防止”に矮小化され、その対策として“CO2排出量削減”ということに主眼が置かれてしまっています。過剰なまでのエコ信仰は、「未来の地球のために」自分のできることを、対価を支払ったりあるいは我慢したりしてでも実行していきましょう、という雰囲気があります。いまの建築の世界では、エコポイントとして認定される高断熱仕様の外装や高効率の熱源装置を採用するなど、ひたすら高価な重装備化の道を歩んでいます。そこには、ともすれば、それらが実行できていないことは“悪”なのではないか?とすら思わされる妙な息苦しさがあります。
一方で三分一さんの建築からはあまりそうした息苦しさは感じられず、むしろ、水や風・光といったいわゆる自然のエネルギーをその敷地固有の地産の材のごとく扱い、それらと共存するように建築を組み上げていくことで、建築を周囲から遮断するのではなく地球の一部分として環境に溶け込ませています。敷地固有の情報を読み解いていく様はとても楽しげであり、「未来の地球のために」何かをしていこうということが出発点なのではなく、むしろ人間が現代的快楽を享受する以前から有している本能に従いながら「今を積極的に楽しむために」環境を積極的に捉え考えることが原点にあるように感じられます。
アーキフォーラムのシリーズテーマ「誰がために建築は建つか」に照らして言えば、三分一さんの言う“地球のディテール”を考える、とは一体誰のための行為なのか。
そんな問い立てをしてみるとともに、会場に脚を運んでくださるお一人お一人が「環境」について自らの考えを再確認あるいは再設定できるような充実した回になれば、と思います。(満田衛資)
□第11回講演:
地球のディテール/六甲/三分一博志
□日時:2011年3月26日(土)
●略歴
三分一 博志(さんぶいち・ひろし)
1968年生まれ
東京理科大学理工学部建築学科卒業後、小川晋一アトリエを経て
三分一博志建築設計事務所設立
●主な受賞
2000年 SDレビュー新人賞(Running Green Project)
2001年 SDレビュー 朝倉賞(三輪窯)
2003年 第19回吉岡賞(エアーハウス)
2005年 Detail Prize 2005 , Special Prize(三輪窯)
2010年 日本建築大賞(犬島アートプロジェクト「精錬所」)
●主な著書
2011年 JA 81 SPRING , 2011『 三分一博志 』(今月発売/新建築社)
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